社外取締役・社外監査役の要件と商業登記実務の取扱いを解説

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※本記事は、掲載時点で施行されている会社法その他の関連法令に基づき作成しています。将来的な法改正等により内容が変更される可能性があります。

はじめに

コーポレートガバナンス強化の流れの中で、社外取締役・社外監査役の独立性要件と登記簿上の表示の可否は、実務で頻出の論点です。平成26年改正(2015年施行)以降、独立性要件は厳格化される一方で人材確保への配慮もなされ、商業登記における取扱いも整理されています。

社外取締役・社外監査役の定義

  • 社外取締役は、当該会社・子会社等の業務執行に関与していないこと、親会社や兄弟会社の業務執行者でないこと、一定の親族関係がないことなど、独立性を確保するための要件を満たす取締役です(会社法2条15号)。

会社法2条15号 社外取締役 株式会社の取締役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。
イ 当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の363条1項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく、かつ、その就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
ロ その就任の前10年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
ハ 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。
ニ 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。
ホ 当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は2親等内の親族でないこと。

  • 社外監査役も同趣旨で、監査役が当該会社や子会社の業務執行に関与せず、親会社等や兄弟会社との関係も持たないことを要件としています(会社法2条16号)。

会社法2条16号 社外監査役 株式会社の監査役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。
イ その就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員。ロにおいて同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。
ロ その就任の前10年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の監査役であったことがある者にあっては、当該監査役への就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。
ハ 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役、監査役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。
ニ 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。
ホ 当該株式会社の取締役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は2親等内の親族でないこと。

要件改正の経緯

平成26年の会社法改正により、社外性の定義は次のように見直されました。

また、令和元年の会社法改正により、一定の株式会社は社外取締役の設置が義務化されています。

厳格化

  • 親会社・兄弟会社の業務執行取締役等でないことを追加
  • 重要使用人やその配偶者・2親等内親族でないことを追加

緩和

  • 過去に業務執行取締役等であっても、退任から10年以上経過していれば社外取締役となれる規定を新設

上場企業の設置義務化

令和元年会社法改正により、次のいずれにも該当する株式会社は社外取締役を置くことが義務付けられました(会社法 327 条の 2)。

  1. 監査役会設置会社
  2. 公開会社 ※1
  3. 大会社 ※2
  4. 株式について金商法214条1項有価証券報告書の提出義務がある会社

※1 譲渡制限の付されていない株式を発行することができる株式会社

※2 資本金 5 億円以上又は負債総額 200 億円以上の株式会社

商業登記の実務取扱い

登記が必要な場合

社外監査役である旨監査役会設置会社の場合に登記事項となり、役員区に記録されます。

社外取締役である旨は、例外的に以下の場合に限り登記されます。

  • 指名委員会等設置会社
  • 監査等委員会設置会社
  • 特別取締役による議決の定めを設ける場合

登記が不要な場合

  • 金融商品取引法に基づく社外取締役の設置は登記事項に含まれず、登記は不要です。

社外性喪失の登記

登記が必要な場合で社外取締役が要件を満たさなくなったとき、社外性喪失の変更登記を行う必要があります。

既存の取締役を社外取締役にする場合

既に在任している取締役が機関変更等により「社外」として位置づけられる場合、役員区に社外取締役である旨を追加する変更登記を行います。

まとめ

  • 社外取締役・社外監査役は会社法で社外性要件が規定されている(会社法2条15号・16号)。
  • 社外取締役の設置は上場会社等に義務づけられている(会社法327条の2)。なお、登記事項とはされていない。
  • 社外性を喪失した場合は社外性喪失の登記が必要。既存取締役を社外取締役とする場合も、社外取締役である旨の登記が可能。

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司法書士を目指している大阪生まれののかに
司法書士を目指す中で得た知識や経験を記録しています。実務に直結する内容も意識して発信していきます。
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