株主総会資料の電子提供制度とは|令和4年会社法改正のポイントを条文ベースで解説

※本記事は、掲載時点で施行されている関連法令に基づき作成しています。将来的な法改正等により内容が変更される可能性があります。
法改正の背景
株主総会資料のデジタル化・ペーパーレス化を進め、株主に対してより早期で充実した情報提供を可能にしつつ、会社側の印刷・郵送に要する時間と費用を削減することが立法の趣旨と言われています。
令和元年改正会社法により「株主総会資料の電子提供制度(電子提供措置)」が創設され、同制度を定める条文(会社法325条の2〜325条の7)が整備されました。施行は令和4年9月1日からです。
従来の紙送付を基本とする運用から、電子提供を基本にしつつ必要な株主には書面交付を請求できる仕組みへ転換することで、利便性と株主保護の双方をバランスさせる設計になっています。
電子提供措置をとる旨の定款の定め(同法325条の2)
会社は、株主の個別の承諾を得ていないときであっても、取締役が株主総会の招集手続を行うときに、下記の株主総会参考書類等の情報を電子的に提供する(電子提供措置)旨を定款で定めることができます。
- 株主総会参考書類
- 議決権行使書面
- 計算書類及び事業報告
- 連結計算書類
「電子提供措置」は、法務省令で定める方法により、株主が情報提供を受けられる状態に置くものと定義されています。
定款には「電子提供措置をとる」旨の定めだけで足り、ウェブサイトURL等まで記載する必要はありません。この定めは登記事項とされています(会社法911条3項12号の2)。
〈申請書記載例(一部)〉
登記の事由
電子提供措置に関する定めの設定
登記すべき事項
年月日設定
当会社は株主総会の招集に際し、株主総会参考書類等の内容である情報について、電子提供措置をとるものとする。
※定款の文言通りに記載します。
※電子提供措置をとることが「できる」旨は登記することができません。
登録免許税
金3万円(ツ)
電子提供措置(同法325条の3)
- 開始時期と期間:取締役は、招集手続を行う場合、株主総会の3週間前の日又は招集通知を発した日のいずれか早い日(電子提供措置開始日)から、株主総会の日後3か月を経過する日まで、連続して電子提供措置をとらなければなりません。
- 対象(趣旨):招集通知に記載すべき事項、株主総会参考書類、議決権行使書面、(取締役会設置会社の定時総会では)計算書類・事業報告等、総会判断に必要な情報一式が電子提供の対象です。
招集の通知等の特則(同法325条の4)
- 通知期間の特則:電子提供措置をとる場合、招集通知の期間は一律「2週間」となります。
- 記載事項の特則:招集通知本文には、通常の記載事項に加え、電子提供措置をとっている旨や、電子提供手続を開示用電子情報処理組織で行った旨等、同条が定める事項を記載します。紙面への全文同封は不要で、詳細は電子提供が前提になります。
書面交付請求(同法325条の5)
- 株主の権利:電子提供措置を採用していても、株主は「電子提供措置事項を記載した書面」の交付を会社に請求できます。
- 会社の義務:会社は、招集通知に際し、書面交付請求をした株主に対して、当該総会の電子提供措置事項を記載した書面を交付します。議決権の基準日を定める場合は、その基準日までの請求が対象です。
- 省略の定款規定:書面に記載しなくてよい事項の範囲を定款で定めることができ、その範囲は法務省令(会社法施行規則95条の4)で規定されています。
- 継続・失効:請求後1年経過した後、会社は書面交付終了の通知と1か月以上の催告を行い、株主から異議がなければ当該請求は失効します。ただし、当該株主が異議を述べたときはこの限りではありません。
電子提供措置の中断(325条の6)
サーバ障害等で電子提供が中断しても、会社が善意無重過失又は正当事由であり、かつ中断時間の合計が電子提供措置期間期間の「10分の1」を超えない等の要件を満たすときは、電子提供措置の効力に影響しないとされています。
種類株主総会への準用
上記325条の3〜325条の6の規律は、一定の部分を除き、種類株主総会にも準用されます。
まとめ
本制度は、定款に基づく電子提供を原則化しつつ、書面交付請求や中断時の救済などの株主保護を組み合わせた仕組みです。運用上は、
- 定款整備と登記
- 開始時期(3週間前/通知発出日いずれか早い日)から総会後3か月の連続提供
- 招集通知の特則記載
- 書面交付請求への適切対応(基準日・催告・失効)
- 中断リスク管理
の順で体制を整えることが重要です。
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