DV・ストーカー等の被害者保護|登記事項証明書等の住所非表示措置を簡潔に解説。
※本記事は、掲載時点で施行されている商業登記規則その他の関連法令に基づき作成しています。将来的な法改正等により内容が変更される可能性があります。
DV等被害者保護のための住所非表示制度
令和4年9月1日施行の商業登記規則改正により、登記事項証明書や登記事項要約書にDV・ストーカー被害者等の住所を表示しない制度が導入されました(商業登記規則31条の2)。
対象者、申出方法、効果と終了事由などを簡潔に整理します。
対象者と非表示にできる住所
対象者:
住所が登記されている自然人で、DV防止法の被害者、ストーカー規制法の被害者、児童虐待防止法の被害者等が対象です(商業登記規則31条の2)。
非表示にできる住所:
登記簿に記録されている現在の住所に限られます(過去住所は対象外)。
申出できる者
被害者本人、又は登記の申請人に申出適格があります。
申出手続
申出書に住所非表示措置を希望する旨及びその理由など必要事項を記載し、必要書類を添付して、申出書(委任による場合は委任状)に届出印を押印する必要があります。
申出の添付書面の一部として、住所が明らかにされることにより被害を受けるおそれがあることを証する公的書面の添付が求められます。具体例は次のとおりです。
- 市区町村が発行しているDV等支援措置決定通知書
- ストーカー規制法に基づく警告等実施書面
- 配偶者暴力相談支援センターのDV被害者相談証明
効果
要件を満たした申出をした場合、登記事項証明書や登記事項要約書には住所が表示されません。
役員欄に「商業登記規則第31条の2の規定による措置」と表示されます。
役員に関する事項
| 取締役 甲野次郎 |
| 商業登記規則第31条の2の規定による措置 代表取締役 甲野次郎 |
| 監査役 乙野花子 |
終了事由
- 被害者等から「非表示を希望しない」との申出があれば終了。
- 措置をした年の翌年から3年を経過すると原則終了。ただし災害等やむを得ない場合は例外。
- 住所変更登記が申請された場合は従前の非表示措置は終了し、新住所で非表示を希望する場合は新たな申出が必要。
その他の取扱い
- 登記申請と同時ならオンライン申出可能。
- 一般社団法人、投資法人、特定目的会社、各種法人、組合・信託等にも同様の取扱いがされる。
- 電気通信回線で提供される登記情報(登記情報提供サービス)でも非表示扱いとなる。
まとめ
DVやストーカー等の被害のおそれがある自然人については、登記事項証明書等に住所が表示されないよう申出により保護できます。
対象者の範囲、申出方法、終了事由などの基本を押さえ、住所変更時の新たな申出にも注意が必要です。
参考文献
法務省「商業登記規則及び電気通信回線による登記情報の提供に関する法律施行 規則の一部を改正する省令の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて(通達)」
https://www.moj.go.jp/content/001379349.pdf

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