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取締役・監査役の任期を正しく理解する|誤解されやすい「役員の増員」と「補欠規定」

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※本記事は、掲載時点で施行されている会社法その他関連法令に基づき作成しています。将来的な法改正等により内容が変更される可能性があります。

取締役の任期は、会社の機関設計や経営の安定性に直結する重要なルールです。

しかし実務では、「増員」と「補欠」の違いや、就任時からの任期計算を正しく理解していないために、誤った定款記載や登記不受理といったトラブルが発生することがあります。

本記事では、まず取締役の任期の基本を押さえたうえで、「増員」と「補欠規定」の違いを会社法の条文と実務の視点から解説します。司法書士や会社の総務担当者はもちろん、役員改選の準備を進める経営者の方にも役立つ内容です。

取締役・監査役・会計監査人の任期の基本

役員の任期は、会社法により原則が定められています。役員の種類や会社形態(公開会社か非公開会社か)によって異なります。

1. 公開会社の場合

  • 取締役:選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものまで(会社法332条1項)
  • 監査役:選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものまで(会社法336条1項)
  • 会計監査人:選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものまで(会社法338条1項)

2. 非公開会社の場合

非公開会社(監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社を除く)では、取締役・監査役の任期を定款で延長することが可能です。

  • 取締役:定款で10年以内に延長可(会社法332条2項)
  • 監査役:定款で10年以内に延長可(会社法336条2項)
  • 会計監査人:延長不可。公開・非公開を問わず1年(会社法338条1項)

任期計算例(事業年度末:3月31日、定時株主総会日:6月26日)

取締役(公開会社)
選任日:2025年6月15日
2年以内の最終事業年度末:2027年3月31日
任期満了日:2027年6月26日

監査役(公開会社)
選任日:2025年6月15日
4年以内の最終事業年度末:2029年3月31日
任期満了日:2029年6月26日

会計監査人(公開・非公開共通)
選任日:2025年6月15日
1年以内の最終事業年度末:2026年3月31日
任期満了日:2026年6月26日

※定時株主総会は事業年度終了後3か月以内に招集しなければならない旨が定款に定められているとします。

任期計算例(事業年度末:3月31日、定時株主総会日:6月26日)

取締役(公開会社)
選任日:2025年6月15日
2年以内の最終事業年度末:2027年3月31日
任期満了日:2027年6月26日

監査役(公開会社)
選任日:2025年6月15日
4年以内の最終事業年度末:2029年3月31日
任期満了日:2029年6月26日

会計監査人(公開・非公開共通)
選任日:2025年6月15日
1年以内の最終事業年度末:2026年3月31日
任期満了日:2026年6月26日

※定時株主総会は事業年度終了後3か月以内に招集しなければならない旨が定款に定められているとします。

【ポイント解説】

  • 任期計算は、就任時ではなく、選任時から起算します。
  • 会計監査人は、定時株主総会で別段の決議がされなかった場合は再任された者とみなされます(会社法338条2項)。
  • 定時株主総会が開催されなかった場合でも、任期は「開催されるべき期間の末日」で満了します。今回の例では、2027年6月30日が退任日となります。

取締役・監査役の任期と「増員」「補欠」の違い

会社法は役員の任期を原則として定めていますが、332条1項ただし書きにより、定款や株主総会の決議により「増員時の任期」や「補欠役員の任期」を変更・調整することができます。本稿では、定款記載例をもとに、増員と補欠の制度的な違いを整理します。

増員時の任期

会社法は任期の原則を定めているが、定款に規定を置くことで「増員規定」を設け、増員時の任期を在任者の残任期間に合わせることができる。

<定款記載例(取締役の任期)>

第〇条 取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

2 増員により選任された取締役の任期は、前任者又は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする。

【ポイント解説】

  • 監査役には「増員規定」が存在しないため、監査役を追加する場合は通常の新任選任扱い。※実務上は監査役全員の改選時期を揃えるため、補欠選任の制度で対応することが多いと言われている。
  • 増員は「増員として選任」と明記しなくても、追加で選任された事実があれば当然に増員として扱われる。

補欠就任時の任期

定款に補欠規定を設けることで、欠員発生時にあらかじめ選任された者が就任できる制度を整備できる。

<定款記載例(監査役の任期)>
第〇条 監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

2 補欠として選任された監査役の任期は、退任した監査役の任期の満了する時までとする。

【ポイント解説】

  • 補欠として選任された旨が株主総会で明確に決議されていなければ補欠とは認められない。

おまけ(筆者が遭遇した誤った定款記載文)

第〇条 増員により選任された取締役又は監査役の任期は、他の在任者の任期の残存期間と同一とする。

※前述の通り監査役に増員規定は適用されません。


取締役や監査役の任期は、会社法の原則と定款の規定によって変わります。「増員」と「補欠」の違いを正しく理解し、任期計算を誤らないことが円滑な会社運営につながります。

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司法書士を目指している大阪生まれののかに
司法書士を目指す中で得た知識や経験を記録しています。実務に直結する内容も意識して発信していきます。
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